ハイロウズ「千年メダル」~伊集院光「のはなし」の愛だの恋だの話
久しぶりにハイロウズの『千年メダル』を聴いていて
「永遠に君を愛せなくてもいいか」
「守れそうな約束と気のきいた名ゼリフを 今考えてるところ」
「たとえば千年 千年じゃ足りないか」
ふと伊集院さんの著書『のはなしに』の中にあるプロポーズの話を思い出した。
奥さんに2度プロポーズしているらしい伊集院さん。1度目は意気込んで、自分のお気に入りの場所…無数の蛍が見られる秘密のスポットに連れて行き、考えてきた言葉でロマンチックにプロポーズ。したものの、彼女はその不思議な生き物の光景に見とれていて思いは伝わらず、その場は失敗に終わったという。
その後、だいぶ経ってからその場で思いついた言葉で再びプロポーズ。
「俺、商売柄 口が達者だから、50年くらいだったら、君に『幸せだな』って勘違いさせ続ける自信があるんだ」
50年というところが何とも伊集院さんらしい。1度目のプロポーズの時は、きっと気のきいたセリフを言ったのではないかと思う。だけど結局は、守れそうな約束を言葉にして伝えたのではないだろうか。「永遠に君を愛し続ける」でも「絶対に君を幸せにする」でもなく、「50年くらいだったら、君に『幸せだな』って勘違いさせ続ける自信がある」と。
「永遠」なんていう言葉が酷く嘘くさく思えてしまう自分としては、この伊集院さんの言葉は、「永遠に君を愛せなくてもいいか」と歌ってしまう『千年メダル』と同じくらい好きだ。恋愛なんて所詮はお互いの勘違いみたいなもので、それが結婚してからもずっと続くのなら、それはきっと「幸せ」なことだろう。
『千年メダル』にはどこか男のズルい部分が、伊集院さんの言葉には根っからのシャイな部分が出ているのかもしれない。そういえば、ヒロトも伊集院さんも商売柄 口が達者だ。ヒロトは歌で、伊集院さんは喋りで。ロックンロールとお笑いと、別にごちゃ混ぜにするつもりはないけれど、自分には両方なくては困る。だから、いつも頭の中にある。
話は戻って、先ほどのプロポーズに対する答えが
「50年は半端なんで余裕を持って100年くらいお願い」
だったというからまた凄い。奥さんの方が上手というか、50年じゃ足りないという返しが何とも素敵だ。基本的に愛だの恋だのの話の多くはクソくらえと思っているけれど、恥ずかしながら伊集院さん夫婦はちょっぴり理想だったりする。
最近はテレビで、深夜ラジオのリスナーからしたら違和感のある“愛妻家キャラ”を植え付けられている伊集院さんだけど、確かに奥さんに一途なところは感じる。「いっつも俺んちにいてタダ飯食ってるアイツ」みたいな冗談をわざわざ挟みながら、伊集院さんのトークの端々にはいつも奥さんの話が出てくる。
著書の続編『のはなしさん』の愛だの恋だのの話には、男は浮気をするのが当たり前というトークが展開する中、肯定をしかねて思わず
「僕、かみさんがもし死んだら、次の日死ぬかも知れないって思ってます!」
と番組で言ってしまったというエピソードも書かれている。根底には、容姿に対するコンプレックス、卑屈な俺、モテなかった俺を選んでくれたかみさんを大事にしたい…というような思いがあるのかもしれない。勝手に失礼な解釈だけど。
また、『千年メダル』には
「僕が眠るのは君の夢を見る時」
という歌詞がある。一方、『のはなし』の中にある寝言のエピソードがまた好きだ。
夢を見ているのとはまた違うのだろうけど、かなりはっきりとした寝言を頻繁に言うらしい伊集院さん。ある朝起きたらテーブルに豚キムチ丼ができていて、朝から豚キムチ丼はないだろうと思ったら、実は…
「夜中に悪いんだけど、今から豚キムチ丼を作ってくれないか?本当に申し訳ないけど、頼む」
と夜中に言っていて。奥さんがしぶしぶ作ったところ、一向に起きる気配がなく、今度は「夜中に悪いんだけど、今から粘土を買ってきてくれないか」と同じトーンで言われて、寝言だ!と気づいたという。
ちなみに過去最悪なのは、「寝言じゃないんだ!本当なんだ!よく聞いてくれ!」と懇願する寝言だとか。もう何がなんだか、話で聞いている分には凄く面白いけれど、寝言を聞かされている奥さんはなかなか大変そうである。
最後に、これをロマンチックな感じで言ってみると、僕の酷い寝言が毎日聞けるのは君だけ!なんていうのはどうだろう。どうもこうもないけれど。ちょっとだけ羨ましい、百年メダルを受け取った奥さんが。
そういえば、今日(3月3日?)はヒロトの結婚記念日らしいという話をネットで見た。
それに関してはどうでもいい。記念日とかはどうでもいい。
あなたが生きている今日なら、いつだって素晴らしいもの。