suicide bambi

パンクロックからお笑いまで、気になることを気まぐれに。

幻なんかじゃない

エルシャラカーニの清和さん考案で
新ネタ3本を披露するというストイックなお笑いライブ「ネタ9」
新宿と下北沢とでほぼ交互で行われていて
今月はしもきた空間リバティだった。
(今はネタ強化月間のため、新ネタ2本+改良ネタ)

そのライブのエンディングで、レギュラーメンバーだったムートンが解散したという話を聞いた。なんだか切なくてモヤモヤとして、そのまま帰りづらくて、知り合いの方と色々話していた流れでふと「そういえばあの店ってどこにあるんですかね?」という話になった。

憧れの人ゆかりのお店で、テレビでも時々取り上げられている所。駅からちょっと離れていたような・・・と携帯で調べているうちに、「行ってみましょうか?」という話に。ずっと行ってみたかったお店だけど、この日行くことになるとは思ってなかったので、予期せぬ展開にワクワクした。


店頭にあった芸人さんのサインを見て、既にテンションが上がりながら店内へ。奥に行くと、そこにはサインがずらり。すぐにお目当てのサインを見つけ出し、「ほら、〇〇〇と〇〇〇が並んでる!」「下には〇〇さんのも!」とはしゃいでしまった。

あとでサインの写真を撮らせてもらおうと思って、とりあえず料理を頼んで談笑していたら、目線の先にあの人が・・・

嘘・だ・ろ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

思わず息を飲んだ。
まさかそんなわけがない。
あの人がいる。
さっきサインを見てはしゃいでいた、その本人がいる。

こんなことあるのか?
嘘だろ!
マジか!
夢じゃないのか?
幻じゃないのか?

自分が唖然としているのに気づいた知り合いの方が不思議そうにしていたので、あわあわしながら伝え、そっと確認をしてもらった。やはり驚いていた。自分にだけ見えた幻じゃなかったらしい。あの人は確かにそこに存在していた。

他にもお客さんはいるのに、みんな普通に談笑している。気づいてないのか?それとも、もう気づいた後で落ち着いている状態なのか?あの人がそこにいるんだぜ!なんで平然としてられるんだ!自分がおかしいのか?自分があの人のことが好きすぎるからなのか!?

ちょっと待てよ・・・。さっきサインの話をしていたのが聞こえてしまったんじゃないだろうか?だとしたら、相当失礼なことをしてしまったんじゃないだろうか?呼び捨てにしてしまったし、凄くミーハーな奴だと思われたんじゃないだろうか?

なぜサインの前に本人に気づけなかったんだ!恥ずかしい!申し訳ない!すぐそこにいるのにもう直視できない!あんまり見たら失礼だろうし。でも見たい。こんな機会は二度とない。だってあの人がそこにいる。どうしよう!どうしよう!もう帰りたい!なんかもう帰りたい・・・!!

じたばたとパニック状態の中、頼んでいたメニューが運ばれてきた。すでに胸がいっぱいで、食欲がない。どうしよう、どうしよう。でも食べないのも申し訳ないし、凄く怪しい客になる。既に怪しい客である。それを口に運びながら、心ここにあらずで、そわそわしっぱなし。

しかし欲望には勝てず、あの人の姿をチラチラと見てしまった。あの人は映像や写真やライブで見るそのまんまの感じで、さりげなくそこにいて、でも完璧な姿だった。オーラという言葉を使うのが陳腐に思えるほど、圧倒的だった。でも威圧感がない。偉ぶりもしない。ただただ格好良い。格好良いという言葉では表しきれないほど、素敵だった。

顔をくしゃっとさせて笑い、ぼんやりとおどけた表情をし、ああこの人ってこういう顔するよね・・・!という過去に見た映像がグルグルと頭の中に蘇ってきて、それをリアルで見てしまった。こっそり見ていた笑顔があまりにも眩しくて、思わず目を伏せた。やっぱり直視できない。あまり見てはいけない。あまり見たら失礼だ。自分なんかが見てはいけなんだ、きっと。自分はここにいていいんだろうか?自分みたいなもんがここにいていいんだろうか!?

帰りたい。いや、帰ってどうする!こんな機会、もう二度とない!話しかけたら失礼だろうか。握手を求めたら失礼だろうか。サインを求めたら失礼だろうか。タイミングが良ければ大丈夫だろうか。こっそり様子を伺わせて頂きながら、欲望との戦いを脳内で繰り返していた。

昔の仲間で集まって飲んでいるようだった。凄く盛り上がっているので、変なタイミングで話しかけたら失礼だ。だいたい、もしサインを指差してはしゃいでいたのを見られていたら、どの面下げて話しかければいいんだ!?本人に気づかずはしゃいでいたなんて、とんだ間抜け野郎だ!

ああ、恥ずかしい!申し訳ない!どうしよう!どうしよう!料理を口に運びながら、お笑いライブの話などをしながら、何とか現実を保とうとして、あの人がいる現実感が薄れていった・・・。あまりにもさりげなさすぎる。普通にそこにいて、普通に笑っている。

こんなことあるのか!さっきサインで見てたあの人がそこにいるんだぜ!驚きと興奮がループする。ドキドキとそわそわが行き来する。もし話しかけるとしたら、なんて話せばいいんだ!?

昔からファンでした。昔から大好きでした。いや、まずは「〇〇〇さんですよね?」から入るべきだろうか。ライブよく行かせて頂いてます。以前のバンドの頃から好きです。ラジオ毎週聴いています。そうだ、ラジオだ。

正直、最近あまりライブには行けてなかった。最後に行ったのは今年の春頃だ。今のバンドより、昔のバンドの曲をよく聴いている。毎日あの人のことを考えて過ごしているわけでもない。でもずっと憧れの人だし、あの人のラジオは毎週聴いている。喋りのトーンが心地良いし、色んな曲を選曲してくれて楽しい。あの人のロックンロールも好きだけど、あの人のラジオも好きなんだ。ラジオ聴いてますと言ってみようかな・・・

ふと、オードリー若林さんが本を出した時の握手会を思い出す。ナイナイに握手してもらったラジオ本のイベントを思い出す。好きな芸人さんを間近で拝見する機会には、意外と恵まれている。だけど、好きなミュージシャンに会ったのはこれが初めてだ。

ツアー先で遭遇した、どこどこで遭遇したという話を聞くたび、そんなこと本当にあるのかよ!と、ただただ羨ましく思っていた。まさか自分の身に起こるとは思ってなかった。

手紙の返事でサインをもらったという人の話を聞くたび、いいなぁと思いながらも、返事が欲しくて手紙を出すのはどうなのか。見返りを求めている時点で純粋じゃないような気がしてしまう。本当に伝えたいことを伝えるのが手紙だ。自分があの人に伝えたいことはなんだろう。いつまでも元気でロックンロールし続けてくれればそれでいい。そんな安っぽい手紙なんか書けやしない。

どこかでばったり会える可能性ってどれくらいだろう。よっぽど運がいい人しか会えないんだろう。でも有名人だって普通に暮らしているわけで、毎日誰かに会っているわけで、毎日どこかで奇跡的に出会えてる人がいるのかもしれない。自分もあの人にもし会えたら・・・という夢はずっと見ていた。

が、思い描いていた夢を軽く飛び越すような状況で、あの人はそこにいた。何とも奇跡的な日に遭遇してしまった。ファンの人にはわかってしまうだろうけど、詳しいことは控えた方がいいと思うので「あの人」として書いている。書かずにはいられなかった衝動はどうか許して欲しい。

やがて、他のお客さんが帰り始めた。自分たちの食事も終わってしまった。向こうもぼちぼち帰る雰囲気。もし話しかけるなら帰り際が一番いいんじゃないだろうか。いや、話しかけたら迷惑か・・・。でもこんな機会は二度とない!いざ話しかけようとして、一旦座り込んでを何度も繰り返し、やっぱり無理だ。きっと迷惑だ。申し訳ない。でも、でも!ここで行かなかったら、一生後悔する!!!!!!!!!!!!

一緒にいた知り合いの方に手を引かれ、意を決してあの人の元へ。
「すいません・・・〇〇〇さんですよね?あの、昔からファンで・・・」あの人は目を丸くしていた。こういうことはしょっしゅうあるだろうと勝手に思っていたけれど、あの人は「まさかそんなこと言われるとは・・・」というような顔をしていた。やっぱり迷惑だったのかもしれない。

「こんなところで話しかけてしまって本当にすいません・・・。もし失礼でなければ、握手して頂けませんか?」ここまで来たら行くしかないと、思い切ってお願いした。キョトンとした表情のまま握手をしてくれた。「ありがとうございます!!」と顔も見れずに手も握らせてもらい、その後はもう全く感覚がない。記憶がない。なんだかフワッとしていた気がする。凄く優しい感じだった。感触が思い出せないこの手の中には、ただただ優しかったイメージだけが残っていた。

ここまで来たらと、図々しく「もし良ければこれにサインを・・・」財布の中にいつも入れていた、あの人の写真入りのカードを差し出した。タイミングが悪かったのか、最初はかわされてしまって、ああやっぱりサインまでは失礼すぎたのかも・・・。身を引いてそわそわしていると、一緒にいた方たちが凄く良い人で、こいつは本当にファンらしいと判断してくれたのか、何となくそういう流れにしてくれてサインをもらうことが出来た。もう嬉しくて、申し訳なくて、ありがたくて、「ありがとうございます!!」と土下座に近いお礼をしてしまった。傍から見たらもの凄く変な奴に見えただろう。

逆に失礼だったかもしれない。恐縮させてしまったかもしれない。プライベート感を損ねてしまったかもしれない。持ち上げすぎるのも気持ち悪いのかもしれない。「かもしれない」を考え出したら果てしない。

気の利いたことも言えず、笑顔でお返しできるような面でもなく、太宰治ばりに「生まれてすみません」と常々思っているような人間なので、ただただお礼を言う他に、感謝の気持ちを伝えるすべがなかった。

楽しそうに周りと喋っていた顔と、話しかけられて困っていた顔を思い出す。
嬉しい気持ちと、申し訳ない気持ちが同時に襲ってくる。

しかし、思い切って「ラジオ毎週楽しみに聴いてます」と言ったら、ようやく顔をほころばせて「(番組名)、よろしくね」と言ってくれた。嬉しかった。ラジオが好きで良かった。ロックンロールが好きで良かった。色々思い返したら、一人舞い上がっていた恥ずかしさがハンパじゃないので、これ以上の描写はやめておこうと思う。

格好良く在りたいのに、格好良い人の前では格好悪くなってしまう。嬉しくて申し訳なくて土下座してしまうダセえ自分が、本質なのだろう。健気に泣いたりも出来なくて、逆にヘラヘラしてしまう。感情のコントロールが下手くそだ。もっと上手に格好良く生きたい。

お会計時、もう一度あの人がいる前を通る感じになった。なんだか気まずかったけど、「ライブまた楽しみにしてます!」と言えた。返してくれた言葉は曖昧だけど、その時はニコッとしてくれて・・・あの笑顔を思い出すだけで、あと10年くらいは生きられそうな気がした。

店を出た瞬間、現実に戻った感じで全身の力が抜けた。今日という日は何なんだろう。こんなことあるのか。夢じゃないのか?幻じゃないのか?今でもずっと思っている。でも夢じゃないらしい。サインをみるたび思い出す。ハートと日付を入れてくれた。

人生というのは不思議なもので
お笑いのライブに行き始めたから、あの日あの店に行ったんだ。
音楽のライブに行き続けていたら、あの日あの店には行かなかっただろう。

そしてムートンが解散しなかったら、楽しげに話をしながら真っ直ぐ帰宅していただろうと思う。何となく帰りづらくて、ふと話題に出てきたのがあの店だった。楽しいコントをするコンビだったので凄く残念だけど、きっかけをくれた。

そもそも清和さんが「ネタ9」なんていうストイックなライブを毎月行って、あの日、下北沢でやってくれたおかげなんじゃないか?なんて思い始めると、清和さんにまで感謝の気持ちでいっぱいになる。

ライブのOPはドクター・フィールグッド、エルシャラカーニの出囃子はポーグス、EDはザ・フーが流れていた。頑張って欲しい動物、という漫才が特に面白かった。「日本一の漫才をやりましょう」「それ一番言ったらあかんやつや!」ネタの中にそんなやり取りがあった。日本一だってきっと夢じゃない。

現実は時に夢をも飛び越える。
この世は何が起こるか分からない。
だから面白い。

全ての歯車が噛み合わなければ、あの日あの人には会えなかったはずだ。

ロックンロールの神様、ありがとう。
笑いの神様、ありがとう。

あなたのことが大好きで良かった。

Comment

まつ says... "あー涙出ました。"
よかった。ほんとよかった。
ハラハラしましたよ。
あー、あったかい気持ちで今日は過ごせそうです。
2013.09.23 09:05 | URL | #.vjKhiP6 [edit]
bambi says... "> まつ さん"
すげーダサい思い出ですけど、最高に嬉しかったです。
この世は生きてさえいれば良いことがあります。
2013.09.24 00:49 | URL | #9jgEo1Cg [edit]
ふたりぼっち says... ""
よかったですね~♪
読みながらドキドキしました。
最初にサイン求められた時 
連れの方々を気遣われたんでしょうか?

私だったら固まっちゃって
何も言えなかっただろうな…
bambiさんすごくステキだったと思います。



2013.09.24 15:01 | URL | #U6MqhJ0Q [edit]
bambi says... "> ふたりぼっち さん"
ありがとうございます。今思い出しただけでもソワソワします。
こういうのは本当にタイミングなんだろうと思います。
お開きにする所だったり、皆さんほろ酔いだったりしたので。

色々考えていると、自分の中だけに秘めて見守っているべきだったんじゃないか・・・とも思うので、手放しで素敵な思い出にせず精進したいです。
2013.09.24 18:43 | URL | #9jgEo1Cg [edit]
ウィルコ says... "いつも楽しみに拝見してます"
あの人に遭遇なんて羨ましいです!
私はレコード屋で遭遇するパターンをよく想像してトレーニングしますが(笑)本番はうまくいかないもんなんですね。結果オーライですよ!さらけ出した人に、嫌な気を持つ人じゃないですよ。あの人は。
ラジオを聴き逃しても、いつもバンビさんがいると思って助かっています。いつもありがとうございます。
2013.09.27 20:27 | URL | #lVU1S0xQ [edit]
bambi says... "> ウィルコ さん"
レコード屋で遭遇パターンは絶対想像しますよね!
話題にしてた所にまさかいらっしゃったので、驚きすぎて思考停止しかけてしまいました・・・。変な奴に会ったな、くらいに思って笑ってもらえてたらいいのですが。
ラジオは出来る限り追っていきますので、楽しんでもらえてたら嬉しいです。
2013.09.28 04:20 | URL | #9jgEo1Cg [edit]
ぐみ says... ""
わー、すばらしい!そんなことって本当にあるんですね。
ブログやツイッターなどで遭遇話があったりしますが...
でも出待ちするのは違う気がするし、偶然会うってのがいいですよね。

〉 どうしよう!どうしよう!もう帰りたい!なんかもう帰りたい・・・!!

この気持ちよく分かります(笑)
2013.09.29 02:56 | URL | #- [edit]
bambi says... "> ぐみ さん"
今でも、まさか自分の身に起こるとは…という気持ちでいっぱいです。
あまりに衝撃的だったんでツイッターには気軽に書けませんでした。
もう帰りたい!帰ってどうする!を脳内が繰り返していました(笑)
2013.09.29 04:29 | URL | #9jgEo1Cg [edit]

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