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パンクロックからお笑いまで、気になることを気まぐれに。

浜口浜村

たまに行くお笑いライブで見るくらいの距離感で、ネタもそんなにたくさん見たことがあるわけでもない。それほど深く知らない自分が、浜口浜村について書いていいのか分からない。おかしな認識をしている部分もあるかもしれない。

でも浜口浜村が好きだった。解散すると知った時、凄くショックだった。けれど、何が言えるというのか。何も言えなかった。ただ、浜口浜村寄席を見れなかったことを悔やみ、夏の単独ライブが底抜けに面白かったことを思い出した。


何組も出演するお笑いライブに行くことが多いので、単独ライブを観たことがあるコンビは少ない。浜口浜村の単独を観に行ったという話をお笑いライブで会う方に言ったら、「意外ですね」と言われて、「なんか好きなんです」としか答えられなかった。

浜口浜村の面白さ、浜口浜村のどこが好きなのかを上手く説明できない。独特の世界観で…なんて言葉をひねり出して語った所で嘘くさくなってしまう。浜口浜村の漫才を見たあと、暗転した中で「あーとてもいいな。とてもいい」と心の中で叫んでしまう、あの感じをどう表現したらいいのか。他の人がどう思うかは分からない、世の中がどう評価するかなんて関係ない、ただ「自分はこれが大好きだな」と思う。相対的ではなく、絶対的な面白さを感じる。


2015年5月26日 しもきた空間リバティ
K-PRO一週間ぶっ通し興行五日目「エルシャラカーニ清和セレクションネタライブ -刮目せよ-」

5月に行われた、エルシャラカーニ清和セレクションネタライブで、清和さんは浜口浜村について「漫才のカテゴリーを越えている」と話していた。確かに浜口浜村はいつも見たことのないような漫才をしていた。

「ネタがあんまりウケなかったので…」と言う浜村さんに、清和さんが「ウケなくていいのが浜口浜村!」と言っていたのに妙に納得してしまった。ウケていなかったとしても、いい漫才をしていたのが浜口浜村だった。でもおそらく彼らはちゃんとみんなにウケたくて、ちゃんと世の中にネタで評価されたかったんじゃないかと思う。


2015年8月13日 座・高円寺2
浜口浜村・単独ライブ「納涼の夕べ」

浜口浜村の単独ライブで見たネタは実に多様だった。賞レースに向けてたくさん作ったと話していた気がする。

オープニングVTRは、浜村さんの語りのようなものから始まり、「表現者にとって作品は子供と同じ」「ひとつもちゃんと育ったことがない」「いくつ殺してきたのか」「自分の所に生まれてこなければ…」と胸に迫る言葉が続くと、浜口さんの「暗いわ!」というツッコミが入り、そこから一転 シュールな世界へ。そのギャップ、謎の展開が浜口浜村らしいなぁと思ったけれど、浜口浜村らしさとは一体何なのか。シュールと表現されるのも嫌なのかもしれない。

合間にコントVTRなどを挟んで、色んな漫才をしていた。(なかなかキテレツな出店のコントで、そこに出てきた小道具の手作りイカは物販で売られていた!)

・動物漫才大会
・無人島に持っていくとしたら
・お前 盗んだだろ
・空き時間に何をするか
・訪問販売で騙された
・イス取りゲーム
・結婚式の友人代表スピーチ
・ネタの転調
・ガバァしたい
・ツムツムを当てたい
・別の人と組みたい
・浜口さんはビビり
・動物漫才大会

これらの漫才の中で浜村さんは「奇をてらうしか能がないんだから」「シュール芸人の性」「お笑いファンにお笑いファンにしかウケないと言われてる」と自虐めいた、ドキッとするようなセリフを口にしていた。芸人としての見られ方に思う所があるのか、ネガティブさと笑いの狭間が面白かった。

最後のネタの際には、「真面目なネタはお嫌いですか?イス取りゲームとかガバァとか変なネタばかりウケて」と、また心情的なものがもれていた。単独ライブでホームのはずなのに、意外にお客さんがちゃんとネタを見ているという。確かにイス取りゲームとガバァのネタは特に面白くて、ウケ方はネタによってまちまちだった気がする。

動物漫才大会は、12組の動物と競う中で最終的に人間の浜口浜村が優勝し、そこからまた展開していくネタだった。ふと思い出したのは、数年前のエルシャラカーニの単独ライブで見た、漫才の大会になぞらえた果物トーナメントで野菜であるトマトが優勝するというネタ。トマトがエルシャラ自身だとすると、自分たちは異質な存在で、別のカテゴリの中で戦っているような気持ちなのでは…と勝手に解釈していた。これが凄く面白くてグッとくる漫才だったのを覚えている。

動物の中で戦う人間の浜口浜村は、自身が異質な存在であるつもりはなくて、しかし周りと違うカテゴリの中に置かれている。猿の惑星にたどり着いてしまった人間のような、そこで戦わなくてはいけないような気持ちなのでは…というのは深く考えすぎだろう。動物漫才大会はその後、確かライオンに扮した浜口さんがにこやかに出てきたので、百獣の王が登場したらもうお手上げだ。

理屈っぽく考えてもしょうがない、ということを浜口浜村の漫才は教えてくれる。理屈なんかないのかもしれないし、彼らの中にはあるのかもしれない。それを想像するのは楽しいけれど、分かったような気になるのは良くない。

ただ、はみ出して行き場のない人生の中にいる自分は、果物の中で戦うトマトのエルシャラカーニを応援したくて、動物の中で戦う人間の浜口浜村を応援したいと思った。

エンディングのVTRでは、タイトルの「納涼の夕べ」にふさわしく、お祭りで着物姿の二人の映像が流れた。格好良いというよりもやはり可愛らしく見えてしまう彼らの、微笑ましくなる姿があった。エンドロールが終わると、なぜかもう一回、今度は名前の表記にそれぞれ“好きなかき氷の味”が付いてエンドロールが流れた。なんだこれー!と最後まで思わず笑ってしまう趣向が凝らされていた。

最後の挨拶に再び二人が登場すると、浜村さんがいつの間にか坊主に……。エンドロールを2回流して時間を伸ばしてその間に頭を刈って坊主にしてくるボケを最後の最後にぶちかましてくるという、もう最高だった!!!!!!!!!!!!!

そういうことをやっちゃう人にどうにも惹かれてしまう。ネタを見てほしいのに、坊主にして驚かせる。浜村さんはどんな思いで坊主にしたのか。単にボケとしてやりたかったのか、みんなをビックリさせたかったのか、ワーキャーに対して突き放したかったのか、可愛らしいイメージを引っくり返したかったのか。


2015年1月6日 しもきた空間リバティ
新春K-PRO!ネタ!企画!トーク!~お年玉付き~

今年の1月の新春K-PROライブで、福袋に入れるプレゼントを持参する企画があった。その時、浜村さんが持ってきたのはおそらく松本人志さんの自伝「松本坊主」だった。

Amazonでその本の内容説明を見てみると、「髪の毛っていうものが、俺はそんなに必要ないんじゃないのかな…ぱっと見てなんか髪の毛とかがない生き物ではないのかなぁ、って」と松本さんの言葉らしきものが書かれている。浜村さんの坊主はもしや、松本さんの坊主に通ずるものだったんだろうか。実際の所は分からない。



二人がじっくり話をするのも聞いてみたかったけれど、トークライブや若手中心のライブは何となく行きづらかった。浜村さんは何となくこういう人かな…という印象があるものの、浜口さんはどういう人なのかよく分からないまま、時々不思議なボケを挟み込んでくる不思議なイメージのまま、もう浜口浜村としての二人の姿が見れる機会がないのかと思うと残念でならない。ネタも漫才ももっと見てみたかった。


2014年7月20日 Asagaya/Loft A
ロックンロールカラオケ“ALL”ナイト

去年の7月のロックンロールカラオケナイトで、浜村さんはビートたけしの「嘲笑」を歌っていた。決して歌が上手いわけでもない。歌手になりきれるコント師に比べて、生身に近い漫才師は照れ屋が多い。時折 調子はずれになる歌声で、マイクを不器用に握りしめて全力で歌う浜村さんの姿に、本当にちょっと泣きそうになるぐらい感動してしまった。心が震えた……

歌自体がもの凄くいい曲で、たけしさんが歌う原曲もあれから何度も聴いている。でも浜村さんが歌うとまたちょっと違って、拙い故の味わいがあり、戸惑い漂うような哀愁に胸がギュッとなる。歌ったあと、浜村さんはおどけてコマネチをして見せた。



歌が上手い芸人さんはたくさんいる。だけど、大事なのは上手いとか下手とかじゃない。どんなに凄い歌手の歌を聴いても、自分の中で響かないものは響かない。どんなに上手い漫才を見ても、心に響かないものは響かないのと同じく。

浜村さんの歌を聴いた時、
この人は表現者として凄いものを持っている。
一番大事なものを持っている。
この人は凄い漫才師になる。
そう確信した。

そんなふうに思ったのは初めてだった。13年やってきた芸人さんに対して、凄い漫才師になる…というのは失礼な言い方かもしれない。歌を聴いてそう思ったなんて嬉しくないと思うのであまり強くは言えないけれど、あの時 確かに感じたことを書き残しておきたかった。

その日、清和さんと浜村さんは最後までお客さんを見送っていた。浜村さんは休憩中に歌った曲が上手く歌えなかったと何度も謝り、清和さんは「たまにはこういうのもね。普段は漫才をやってるから。今年こそは頑張ります」と空っぽの客席に向かって喋っていた。ロックンロールカラオケナイトは、芸人の隙間のようなものが見えるから好きだ。あの時、マイクスタンドの横に佇む二人の姿は、まぎれもない“漫才師”に見えた。



気を抜いたらやめてしまうんじゃないかという世代のコンビも多い中、まさか浜口浜村が解散するとは思ってもみなかった。まだ可能性も未来も充分あると思っていたコンビが、凄い漫才師になるだろう人が解散してしまうなんて。

浜村さんにはやはり漫才を続けてほしい。でもそれは浜口浜村ではない形で有り得るんだろうか。浜口さんは芸人をやめてしまうという…。未来に向かって決断した人に対して、あれこれ言うのは良くないんだろう。引き止めるすべもない。何も言える立場にない。

ただ、何かを書かずにはいられなかった。
浜口浜村について考えずにはいられなかった。
思いを語らずにはいられなかった。

彼らの未来を応援したい。

この人は凄い漫才師になる。
あの確信は……


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